いきなりですが只今俺は料理に勤しんでいます。
メニューはちびっ子も大好き、グラタン!
何で急にグラタンかと言えば恋人である三反田数馬がぼそりと「グラタン食べたいなー」とこぼしたのを聞き逃さなかったからです。なんて献身的!惚れた弱みなんですけれどね。そして今日は数馬が家に来るのだ。
そんなこんなで料理に少しは自信のある俺はせっせとグラタンを作っているわけです。ちなみに手先が元々器用だったのと、何故か俺の料理を食べたがる馬鹿二人(もちろん神埼左門と次屋三之助だ)と食満先輩のせいで俺の技術は飛躍的に向上したのでありました。
一度「店の料理の方が美味いだろう?」って聞いたら「そんなことない!」とこっちが引く勢いで答えられたのでそれ以来時間があれば作っている。だって正直嬉しかった。先輩に関しては大学生の自炊だし、栄養面なども心配なので先輩の親友の善法寺先輩に色々と聞いてその知識を活用している。ただ善法寺先輩は、少し、いやかなり、変な人だ。それこそ数馬の直接の先輩に当たるので失礼の無いようにとは思うのだが、あの人体への並々ならぬ欲望?愛情?はどこから湧いて出るのだろう。時々食満先輩が心配になるがあの二人は保育所からの付き合いなので今更俺が心配する事ではないか。
話を戻して、グラタンである。
ホワイトソースから作ったそれはいい匂いをさせていた。うん、良い出来。
保険委員の数馬は口をすっぱくして野菜をとれ、と言うので今回はほうれん草のグラタンにしてみた。耐熱皿に移し、チーズを降りかけバターを乗せる。
後は焼くだけなのだがやはり熱々が美味しいので数馬が来てから焼く事にした。
その後適当にテレビを見て暇を潰しているとケータイが鳴った。数馬専用の着信音である。いつまでたってもそれに慣れない俺はケータイを取り落とすところだった。付き合って早2ヶ月だというのになんだこの反応は。どこの恋する乙女だ、と自分を叱責しながら玄関に向かう。メールの内容は「今着いたよ(絵文字)」。ドアを開けると当たり前だけれど数馬がいた。
「ごめんね、遅くなっちゃった」
はにかんだように笑う数馬を、別に遅くなんてねーよとぶっきらぼうな物言いで迎える。
「あ!」
目ざとい・・・いやこの場合鼻ざとい数馬は早速俺が今まで作っていたものを匂いをかぎ、元を見つけたようで「グラタンだー」と嬉しそうにしていた。
していたのだが。
まあそこからはお決まりのパターンと言うか。
キッチンマットにけつまずいた数馬はそのままテーブルクロスにしがみつきそして耐熱皿は中を舞った。
いつもと違うのは中身が数馬にかからなかったことだろうか。哀れグラタンは俺が引っかぶる羽目になった。二つ皿はあったのに二つとも自分が引っかぶるとなると俺も十分不運の素質があるんじゃなかろうか。
「さ、作ちゃん!大丈夫!?」
「だ、大丈夫・・・」
幸いな事に温度はそんなに高くなかった。なので火傷は無いがシャツや肌にべったりとまとわりついて気持ち悪い。
「あーべとべと」
そう呟いて指についたホワイトソースを舐めていると数馬は顔を赤らめてこっちを見ている。なんだ、と思っていると数馬が言った。
「ホワイトソースって、えろいね」
見てんじゃねぇ!と叫んで風呂場に向かった。心臓がばくばく言ってる。えろいねって言った数馬の顔の方がえろかった。勘弁してくれ。

シャツを着替えて簡単に髪と顔を洗ってキッチンに行くと後片付けがしてあった。
「わりぃ、片付けさせて」
「僕こそごめん。せっかく作ちゃんが作ってくれてたのに・・・」
申し訳無さそうにしゅんとする数馬が可愛らしくて、でも元気を出させたくてコンロの上の鍋を見せた。
「あ、グラタン・・・!」
三之助と左門がいつ嗅ぎつけてくるか分からなかったので余分に作っていた分は無事だったのだ。
「これ、三之助と左門用だったけど、内緒で食っちまおうぜ」
そう言って笑うと数馬も笑った。やっぱり笑顔の方がいい。
奇跡的に自分にも数馬にも当たることなくそして割れることなく無事だった耐熱皿にグラタンをよそって焼いて二人で食べた。
美味しいと数馬は終始笑顔で、作ってよかったと心の底から思った。



ぶっかけ!



えろいね、って言った数馬の表情に作兵衛がどぎまぎして悶々として眠れなくなるのは別の話。
ホワイトソースまみれになった作兵衛に欲情した数馬が僕って変態なのかなと伊作に人生相談のようなものを持ちかけるのもまた別の話。




ぶっかけ!」様に参加させていただきました。
とても楽しかったです!素敵企画ありがとうございました。











2009/10/04

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